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【医療】うつ病やPTSDに効く? 『LSD』『MDMA』『キノコ』… 医学的研究が進む「幻覚剤の最先端」[01/23]

1 :
逢いみての… ★
2021/01/23(土) 23:29:08
 近年、マジックマッシュルームに含まれるシロシビン、LSD、MDMAなどのサイケデリクス(幻覚剤)の学術的研究の気運が再び高まっている。アメリカの人気作家/ジャーナリスト、マイケル・ポーランによるノンフィクション『幻覚剤は役に立つのか』(原著は2018年刊。邦訳版が20年に亜紀書房より刊行)は、その流れを紹介して「ニューヨーク・タイムズ」紙の「今年の10冊」(18年)に選出され、Netflixでのドキュメンタリー番組化も予定されるなど話題を呼んでいるのだ。

 ここでは、従来のように神秘体験をしたといったスピリチュアル話、著名人がオーバードーズ(過剰摂取)で死んだというスキャンダル、ポップ・カルチャーへの影響云々を掘り下げるつもりはない。サイケデリクス“研究”の歴史を踏まえた上で、その最前線を見ていこう。

 まずは、LSDの研究を振り返りたい。そもそもLSDとは、1938年にスイスの薬品会社サンド社(現ノバルティスグループ)勤務のアルバート・ホフマンが精製したもので、5年後に彼が偶然吸引して幻覚の効用が発見された。すると、サンド社は世界中の研究者たちに実験のための使用に関して無償提供を始めた。

 こうして49年、LSDはアメリカに渡る。精神分析調査研究員マックス・リンケルがハーバード大学付属のボストン精神障害研究所でLSDの研究を始め、100名の志願者にテストした。彼は50年のアメリカ精神障害学会で、LSDが正常な被験者に一時的に精神障害のような混乱を引き起こすと発表。続けて、のちにCIAや米国陸軍とサイケデリクス研究を進めることになるポール・ホック博士が、LSDやメスカリン(メキシコのサボテン、ペヨーテなどに含まれる成分)は統合失調症と同じ症状をもたらすと報告すると、医学界にセンセーションが起こる。カナダの病院に勤務してLSDとメスカリンを研究していたイギリス人精神分析医ハンフリー・オズモンドも、52年にメスカリンとアドレナリンの分子構造の類似性を指摘、統合失調症は肉体が自ら幻覚剤適合性物質を生産した結果に起こると発表し、やはり医学界に衝撃を与えた。これを知った英国の作家オルダス・ハクスリーが自ら実験を志願したことで、エッセイ『知覚の扉』(54年/平凡社ライブラリー)が生まれる。

 こうした流れが精神疾患の生化学的基礎に関する重要な論文の発表を誘発し、それが刺激になって脳科学への関心が高まった。数マイクログラムのLSDで精神疾患に似た症状が起こるなら、精神障害の原因は当時自明視されていた心理面の問題のみならず、脳内物質が影響しているのではないか、と。LSDは50年代からの脳科学の発展にも貢献したのだ。

 ともあれ、LSDやシロシビンを使った臨床実験をもとに、49年から約10年でアメリカだけでも1000以上の論文が書かれ、4万人に投与された。精神疾患やアルコール依存症に効果があるとの発表が相次ぎ、しかも治癒率・回復率では当時のオーソドックスな治療法や電気ショック、ロボトミー、向精神薬よりも高く、かつ危険性は低いと報告されていた。

 一方、ダグラス・エンゲルバートやスティーブ・ジョブズをはじめとする西海岸のギーク、発明家、起業家たちがLSD体験をしたことはよく知られているが、著名な科学者にも服用経験者は少なくない。新型コロナウイルスのPCR検査で用いられるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を83年に発見し、93年にノーベル化学賞を受賞したケリー・マリスは、幻覚剤の効果実験を行っていた研究者のひとりでもあり、自らのLSD体験によって心が開かれたことがPCRの発見に寄与したと語っている。科学エッセイの名手オリヴァー・サックスも、60年代に各種サイケデリクスを経験したことと神経科学者の道に進んだことには関係があると『幻覚の脳科学 見てしまう人びと』(ハヤカワ・ノンフィクション文庫/単行本は14年)で書いているほか、LSDを体験した科学者は挙げればキリがない。

続く

以下ソース
https://www.cyzo.com/2021/01/post_266065_entry.html

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2 :
逢いみての… ★
2021/01/23(土) 23:29:22
 また、50年代にサイケデリクスへの医学界の関心が高まるのと並行して、CIAは53年から諜報活動のための幻覚物質研究を始動する。ただ、自白剤、意図的に精神疾患を引き起こす薬物、洗脳手段などさまざまな用途として研究を進めるも、いずれもうまくいかなかった。

 こうした40~50年代の学術的蓄積を破壊したのが、60年にハーバード大学の心理学教授ティモシー・リアリーとリチャード・アルパート(のちにラム・ダスとして71年に『ビー・ヒア・ナウ』を出版)が行った実験「ハーバード・シロシビン計画」だ。これは、50年代までの学術研究におけるサイケデリクス使用から大きく外れていた。リアリーたちは自ら被験者と共に繰り返しドラッグを利用するなど科学研究の枠組みから逸脱、さらには「大量にLSDをバラまいて精神革命を起こす」などとメディアに吹聴し、ベトナム戦争に対する反戦運動などのカウンター・カルチャーと結びつく。かくしてLSDは厭戦意識をあおり、社会的に危険なドラッグと見なされた。65年にアメリカではLSDの非合法販売が軽犯罪となり、翌年にはサンド社は配付を中止。CIAも60年代半ばに研究を打ち切る。LSDだけでなく、ほかのサイケデリクスにも規制は及び、71年、国連はマジックマッシュルームをヘロインと同じ規制薬物のスケジュール1に指定した。

 50年代の論文大量生産がウソだったかのように、サイケデリクス研究は冬の時代を迎えるのである。

 ところが、90年代末からLSD、シロシビン、MDMAやケタミン、DMT(南米アマゾンの植物、アヤワスカなどに含まれる成分)の学術分野における研究目的の使用が徐々に許諾されるようになった。今や米国トップクラスのカリフォルニア大学バークレー校、ハーバード大、ジョンズ・ホプキンス大、イェール大、ニューヨーク大などが研究拠点を持ち、ヨーロッパでも研究が進められている。

 この背景には以下のようなことがある。

(1)神経科学の発達とMRIなど脳機能の測定装置の進歩により、薬物が実際に脳にどんな影響を与えるのかがわかるようになってきた――現在の研究水準・研究規範に照らした再検証が可能になった/再検証すべき段階になった――こと。

(2)60~70年代に体験した世代が、今や研究機関や規制当局のエスタブリッシュメントとして君臨したり、アンダーグラウンドでサイケデリック・セラピーなどの実績を長年積み重ねたりしてきた結果、「十分に配慮した環境下で容量・用法を誤らなければ、使用のリスクは高くない」というコンセンサスが生まれてきたこと。

(3)プロザックなどSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)以降の精神医療の行き詰まり打破への期待が高まっていること。

 サイケデリクスはアルコールやニコチン、コカインのような依存性の高い薬物とは根本的に脳への影響が異なることが神経科学的に明白であり、両者を混同して共に推奨する科学者やセラピストはほぼいない。例えば、コカインは脳の報酬系(快楽を司るドーパミン神経系回路)などを一時的に満たして深い多幸感を引き出すが、人によってはそれが依存症の引き金になる。一方、マジックマッシュルームに含まれるシロシビンは、理性を司るとされる脳の前頭前野における情報のやり取りの仕方を変える。効く部分も効き方も、まったく異なるのだ。その上、サイケデリクスは基本的に依存性はなく、副作用も相対的に少ない。

 近年の具体的な研究分野としては、まず50年代までにも行われていた精神疾患やアルコールなどの依存症の治療がある。加えて、末期がん患者のような終末期医療を受けている人々が抱く死の恐怖をやわらげるといった効果も期待され、研究されている。そして、サイケデリクス服用時における脳の状態の変化をMRIなどで測定することで、いまだ脳科学で解き明かせない人間の「意識」の謎に迫る足がかりにしようといった動きもある。

 では、どんな研究の成果があるのか? ほんの一部だが、以下に挙げてみよう。

続く
3 :
逢いみての… ★
2021/01/23(土) 23:29:31
 ジョンズ・ホプキンス大の研究者が不安や抑うつ症状を抱えるがん患者51人にシロシビンを投与したところ、半年が経過した後も被験者の80%が緩和した状態を保ち、さらに被験者の60%は症状がほとんど見られない平常の状態にまで戻った。これらの研究を受けて18年、米国食品医薬品局(FDA)はシロシビンには深刻な症状への潜在的治療効果が認められるとして、薬品の審査と開発の迅速化を許可した。

 先に触れたSSRIは感情を抑制する働きによる副作用が知られているが、シロシビンは逆に感情を拡大することで他者とのつながりを増すという。治療セッションは1~2度受けただけで効果が得られ、薬が抜けた後も良好の状態が続くと報告されている。シロシビンに似た自然由来のドラッグであるイボガインも、主にラットを用いた32件の研究活動のまとめとして、コカイン、アヘン、アルコールの自己投与を減らす効果があるとした記事が16年5月発行の科学雑誌「サイエンティフィック・アメリカン」に掲載されたほか、ポジティブな効用が認められている。

 また、ニューサウスウェールズ大のコリーン・ルー教授は、ほかの薬では効果がなかったうつ病患者を対象に、16年から3年かけて二重盲検法(医師も患者もどんな薬を使うか知らされないテスト)によるケタミンの治験を実施。全員60歳以上の被験者16人にケタミンを1回投与しただけで、被験者の半数にうつ病の症状が見られなくなった。さらに、ジョンソン・エンド・ジョンソン社とイェール大が差し迫った自殺リスクのある68人にエスケタミン(ケタミン分子の一部をなす物質)を投与したところ、24時間以内に抑うつ症状の改善が見られ、その状態が25日前後も持続。エスケタミンは、従来の治療法で改善が見られないうつ病患者に対し、医師の監督下での処方が19年3月にFDAによって認められ、同年12月には欧州委員会の承認も得た(ただし、ケタミン、エスケタミンはDMTなどと異なり、乱用につながる懸念もある)。

 そのほか、アメリカの非営利団体Multidisciplinary Association for Psychedelic Studies(MAPS)がPTSD(心的外傷後ストレス障害)患者を対象にMDMAを用いた臨床試験では、被験者107人のうち56%が2カ月後にPTSDの条件に合致しなくなり、12カ月後にはその割合は68%にまで高まった。なお、MDMAはPTSD以外にも、不安障害や自閉症、アルコール依存症への応用が期待されている。

 こうした研究の成果は、医療の“現場”にもすでに影響を与えているのだろうか? ニューヨークで開業している精神科医・松木隆志氏は、こう語る。

「いずれの幻覚剤も医療分野では実用段階ではなく、依然として研究段階といえるでしょう。まだ大規模な治験までは行われておらず、臨床現場で使われるようにはなっていません」

 現時点ではそのような段階であるが、将来的には日本も含めた世界各国の薬局や通販で気軽に幻覚剤が買えるようになるのか――。おそらく、そうはならない。サイケデリクスの効果的な使用には、いわゆるセットとセッティング(使用者の心を整える+快適な環境を用意する)が決定的に重要だからである。医療目的の場合には、医師やセラピストが薬を用意し、同伴した環境でのみの利用が許されるようになるはずだ。ケシを原料とするモルヒネが医療現場で痛みの緩和に使われるのと同様、管理されたものになる。

 思えば、天然の幻覚剤であるマジックマッシュルームやアヤワスカは、古来より人々から聖なるものとされ、シャーマンがセットとセッティングを準備した上で儀式に用いられてきた。それを西洋人が20世紀半ば以降に奪取し、現地の人々が長年にわたって経験的に培った適切な用法を無視することで事故が多発した。化学的に精製されるLSDやMDMAも含め、21世紀のサイケデリクス・ルネサンスでは、もう一度かつてのような限定的な使用に回帰する――最新の脳科学や精神医療の知見を踏まえた上で、アルカイックなスタイルに接近することになる。

 こうした状況に対して、サイケデリクスがアカデミズムや西洋医学に絡め取られてつまらないと思うか、真摯に科学的な研究や治療効果を期待するかは人それぞれだろうが、現状はそんなところだ。

※「月刊サイゾー」12月号ドラッグ特集より一部転載

(文/飯田一史)
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